遺伝子組換え食品の基礎知識

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はじめに
   クローン動物や遺伝子治療など、新聞紙上で遺伝子という文字を見かけない日の方が少ないくらいである。また、遺伝子組換え食品(GMO)はすでに家庭の食卓に多く並んでいるが、その安全性についての関心は高まる一方で、ついに、農水省では、遺伝子組換え作物を原材料とする食品に、その旨表示することを義務づけることとした(2000年4月告示、猶予期間1年)。また、厚生省でも2002年4月から食品衛生法によっても表示を義務づけることを検討している。そこで、遺伝子組換えとはどんな技術なのか、遺伝子組換え食品の種類にはどんなものがあるのか、安全性はどうかなどについて、農水省ホームページの「組換え農作物早わかりQ&A」から抜粋(一部加工)した。

(Q1)遺伝子やDNAとはどんなものですか。
(A1)
1.植物や動物は、多くの細胞の集まりでできています。例えば、一般的な植物細胞だと、中心に核があり、さらにその中には染色体があります。この染色体には、「遺伝子」、すなわち「親から子へ遺伝する」という形で受け継がれていく遺伝の基本単位が含まれています。これは、「DNA(デオキシリボ核酸)」という物質でできています。
2.DNAは、糖とリン酸がらせん状になった2本の鎖のような形をしていて、その間を4種類の塩基がはしご段のように並んでいます。
 この塩基は、A(アデニン)、T(チミン)、C(シトシン)、G(グアニン)という種類があって、AとT、CとGが必ず対になっています。この塩基の並び方が、生物の身体を作る様々な指令となり、私たち生物の生命現象を司っています。DNAは種を越えて地球上のあらゆる生物に共通する生命の「設計図」を記述した化学物質です。

(Q2)遺伝子組換え技術(組換えDNA技術)とはどんな技術ですか。
(A2)

1.人類は、非常に古い時代から、植物や動物を交配して改良したり、また酒、みそなどの食品を作るために微生物を利用したりするなど、生物の持つ機能を上手に活用してきました。
  遺伝子組換え技術は、このような生物の持つ機能を上手に利用するために開発された技術の1つで、ある生物から目的とする有用な遺伝子を取り出し、改良しようとする生物に導入することにより新しい性質を付与する画期的な技術です。
2.この技術については、以下の長所があります。
@ある生物から取り出した有用遺伝子を種の壁を超えて他の生物に導入できるため、農作物等の改良の範囲を大幅に拡大できます。さらに、食料としてはもちろん、生分解性プラスチック(微生物などにより自然に分解されるプラスチック)や医薬品の生産などにも利用できます。
A他の有用な性質を変えることなく、目的とする性質のみを付与できることから、よりきめ細やかな改良が可能となります。
3.このため、遺伝子組換え技術は、農林水産業・食品産業や関連産業の抜本的体質強化、生産物の多様化・高付加価値化に役立つのみならず、21世紀に向けてますます深刻化が予想される「世界の食料問題や環境問題等の解決」に大きく貢献する技術として世界中で大きな期待が寄せられています。

(Q3)遺伝子組換え技術を用いて作られたものにはどのようなものがありますか。
(A3)

  遺伝子組換え技術が既に実用化している分野には、医薬品、工業用酵素、試薬(実験や検査等に使う薬剤)があります。具体的には、ヒトの医薬品としてインターフェロンやインスリン、衣料用洗剤の酵素などがあり、大きな市場となっています。
 農林水産・食品分野においては、組換え微生物を利用した動物用医薬品(ネコ用のインターフェロンなど)やチーズ製造用の酵素(キモシン)、飼料に添加するアミノ酸の生産のほか、実験用マウスの生産などがあり、多くのものが既に実用化されています。また、農作物についても日持ちを良くしたトマトが1994年に米国において世界で初めて遺伝子組換え農作物として商品化されたのに引き続き、除草剤の影響を受けないナタネやダイズ、害虫に強いトウモロコシやワタが米国やカナダで商品化されています。

(Q4)遺伝子組換え技術を使うと安全上予想もしないような事態が発生しませんか。
(A4)

  遺伝子組換えに当たっては特質の明らかな遺伝子のみを、これまでの育種等により知見が蓄積されている農作物に組み込むもので、予想もしないような特性を持った個体が出現する可能性はほとんどありません。万が一、予想をしないような特性をもった個体が作出された場合でも、現在の安全性評価の基準において、食品としての安全性あるいは環境に対する安全性の面で問題がある場合の、いずれにおいてもその個体を排除できるように評価項目が設定されています。
  なお、特定の目的をもった遺伝子の組換えは、1973年に米国の研究者らが微生物を使って世界で初めて成功し、その後、これまで20年以上にわたって世界中で数多くの実験が行われてきましたが、この技術そのものが原因となって安全上予想もしないような事態が生じた例は一件も報告されていません。

(Q5)遺伝子組換え技術を農林水産業や食品産業などで使うとどんなメリットがあるのですか。
(A5)
  農林水産業・食品産業等における遺伝子組換え技術の利用については、画期的な新品種の作出、生産工程の効率化等といった私達の身近な分野への貢献はもちろんのこと、21世紀半ばの人口100億人時代の食料問題、地球環境問題等を解決するためのキーテクノロジーとしても期待されています。
  遺伝子組換え技術の利用により、従来できなかったある生物から有用な遺伝子を取り出し、他の生物に導入することで、農作物の改良の範囲を大幅に拡大することができます。農作物を利用して自然の状態で分解するプラスチック製品を作ることやエネルギー資源として用いるなど、これまでと全く異なった農作物の利用形態を生み出す上でも有効です。
  具体的には、遺伝子組換え技術は、次のような課題への対応を可能にする技術といえます。
@消費者ニーズに沿った農林水産物・食品の生産
  栄養成分や機能性成分(抗ガン効果等)に富む農作物、日持ちの良い農作物、アレルギー原因物質を除いた食品の生産
A生産力の飛躍的向上による食料問題解決への貢献
  超多収農作物、低温・乾燥・塩害などの不良環境や病虫害に強い農作物の開発
B環境・資源問題の解決への貢献
  生分解性プラスチック、環境浄化微生物、病虫害抵抗性を付与することによる農薬使用量の減少、生物エネルギー等の開発

(Q6)遺伝子組換え農作物はどのようにして作るのですか。
(A6)

  遺伝子組換え農作物を作るには、まず生物から目的とする有用な遺伝子を見つけ、その遺伝子だけを取り出します。さらに、この遺伝子以外の別の遺伝子が混入することがないよう処置します。
  そして、農作物の種類に応じ、最適な方法により農作物の細胞の核内に目的遺伝子を導入します。
  この段階では、目的どおりに遺伝子が導入されているか分からないため、多数の細胞を培養していますが、この中から目的の遺伝子が導入されているものだけを選抜し、増殖させます。さらに、増殖した細胞から芽や根を出させ植物体を再生します。
  こうして育成された多くの植物体の中から、目的とする有用な性質が発現している植物体を選抜し、さらに、 遺伝的に安定なものとするために交配等が行われたものが、遺伝子組換え農作物となります。
  遺伝子組換え農作物を実用化する場合には、環境に対する安全性、食品としての安全性又は飼料としての安全性の確認のための調査、試験が続けられます。

(Q7)人間が他の生物の遺伝子を組み換えるようなことは自然の摂理に反しませんか。
(A7)

  今から約1万年前、人類はそれまでの狩猟・採集生活から、自らの手で食料を生産するという農耕生活を営み始めました。それ以来現在に至るまで、人類は自らの食料として効率よく確保するために、自然界に存在する様々な植物、動物、微生物を交配などによって改良してきました。つまり、交配によって、遺伝子が組み換えられた結果、様々な性質を持った個体が出現し、そのうちの有用な性質を持った個体のみを選抜・改良してきました。今日私たちが日常の生活で食べている米、野菜、肉などのほとんどは、このような様々な交配によって遺伝子が組換わったことの成果です。
   人類が利用する生物の改良は、私達が生命を維持していく上で最も基本となる食料を将来にわたって安定的に確保していくため、また、将来予想される地球規模の環境問題を克服していくためにも不可欠な取組みです。このような生物の改良を進めるにあたっては、広い範囲から有用な遺伝子を探して、それらを品種改良の素材として利用することが有効であることがわかってきました。
  初期の品種改良では自然交配が可能な範囲にある同種あるいはごく近縁の生物同士の交雑によって遺伝子の導入が行われていましたが、さらに、自然状態では交雑が困難であった生物からの有用な遺伝子の利用を促進するために胚培養や細胞融合などのバイオテクノロジー技術を開発してきました。つまり、品種改良技術は、利用可能な遺伝子の数を人為的な技術によって増加させる方向で発展してきたといえます。
  組換え農作物についても、農業生産上有用な形質を発現するように遺伝子が組み換わったものであり、科学的にみれば通常の品種改良で生じる現象と同一の次元の現象が生じているものであるという点、及び将来にわたって食料の生産性や品質を向上させ、私達の生活をより豊かにしていくという点において、これまでに行ってきた品種改良と同じものであり、手法は異なりますが従来の改良技術の考え方の延長線上にあるものです。

(Q8)我が国ではどのような組換え農作物が開発されているのですか。
(A8)

  現在、我が国においては、遺伝子組換え技術を使って病気に強い農作物や低アレルゲン・日持ち性などの機能性を付加した以下のような農作物が開発されています。これらは、環境に対する安全性の評価及び確認が終了しているため一般のほ場で栽培が可能となっております。これらのうち、色変わりカーネーションについては、平成9年10月下旬から切り花で輸入され、日本国内で販売が開始されています。
<我が国において開発されている組換え農作物>

ウイルス病に強いトマト
ウイルス病に強いイネ(日本晴)
ウイルス病に強いイネ(キヌヒカリ)
ウイルス病に強いペチュニア
ウイルス病に強いメロン
低アレルゲンイネ(キヌヒカリ)
ペクチンを多く含むトマト
日持ちの良いトマト
日持ちの良いカーネーション
色変わりカーネーション
低タンパク質のイネ
色変わりトレニア
害虫に強いアズキ
灰色カビ病に強いキュウリ

注:農林水産省の「農林水産分野等における組換え体の利用のための指針」に基づき、開発者の行う安全性評価が同指針に適合していることを確認している作物

(Q9)遺伝子組換え技術によって作られた農作物の食品としての安全性は、どのように確かめられているのですか。
(A9)

  食品については、厚生省の「組換えDNA技術応用食品・食品添加物の安全性評価指針」に基づき安全性が確認されます。
  開発者は、まず、農作物に導入された遺伝子(遺伝子そのものは核酸であり、摂取による人体への影響はあり得ません。)が作り出すタンパク質について、その安全性を評価します。
  具体的には、人工胃液・腸液による消化の有無、加熱処理に対する感受性、予想される摂取量などのデータに基づくアレルギー誘発性、毒性影響、代謝経路への影響等を調べます。さらに、これまで我々が食べてきたその農作物の栄養素・有害物質等の量的変化が起きていないか等について分析します。その結果が厚生省に提出され、食品衛生調査会バイオテクノロジー特別部会で慎重に審査され、必要に応じて追加資料の提出が求められます。
  このようにして、開発者が行った安全性評価が適切でありこれまでの食品と同じように加工利用し、または摂食しても安全であると確認された農作物が、国内において販売されることになります。
  なお、食品としての安全性が確認された組換え農作物ついては、導入された遺伝子が作り出すタンパク質が人工胃液等で短時間に分解されることを食品衛生調査会で確認しており、従来の農作物と同様に摂取しても安全です。

(Q10)現在どんな遺伝子組換え農作物が商品化されているのですか。
(A10)

  現在世界で商業栽培されている主な組換え農作物には、次のようなものがあります。

農作物

開発国

安全性確認年

*日持ちの良いトマト
  ペクチンを多く含むトマト
  オレイン酸を多く作るダイズ
*除草剤の影響を受けないダイズ
*除草剤の影響を受けないナタネ
  ラウリン酸を作るナタネ
*害虫に強いジヤガイモ
  ウイルス病に強いスクワッシュ
*除草剤の影響を受けないトウモロコシ
*害虫に強いトウモロコシ
*除草剤の影響を受けないワタ
*害虫に強いワタ
*色変わりカーネーション
  ウイルス病に強いパパイヤ

米 国
英 国
米 国
米 国
カナダ
米 国
米 国
米 国
米 国
米 国
米 国
米国・オーストラリア
オーストラリア
米 国

1994
1995
1997
1994
1994
1994
1994
1994
1995
1995
1994
1995
1996
1997

注1:*は平成11年6月現在で我が国において利用目的に応じ、商品化に必 要な安全性の確認を終えたもの(ジャガイモは加工して輸入され、食品 としてのみ使用されるため、食品としての安全性確認のみ実施。また、カーネーションは食さないため、環境に対する安全性確認のみ実施)。ただし、我が国での一般ほ場での実際の商業栽培は、現時点では行われ ていない。
注2:安全性確認年は開発国において、最初に商品化に必要な安全性確認が終了した年を示す。

(Q11)海外から輸入される遺伝子組換え農作物の安全性は、どのように確かめられているのですか。
(A11)
  海外で開発され、商品化されている組換え農作物については、当然、その国の評価基準により安全性が確認されています。しかしながら、これらについても、我が国に輸入される場合には、さらに、農林水産省及び厚生省の安全性評価指針に基づき、環境に対する安全性、飼料としての安全性及び食品としての安全性を確認しています。
  農林水産省が行う環境に対する安全性評価については、我が国において栽培されるものであれば、我が国の自然環境における生育特性などを調べる観点から、国内の隔離ほ場で栽培試験を実施することを求めています。また、我が国で栽培されないものであっても種子の形で輸入される場合や植物体が再生する可能性がある場合などには同様の取扱いを求めるなど、より慎重な安全性確認がなされています。
  このように、国内で開発されたものか外国から輸入されたものであるかを問わず、組換え農作物であれば、すべて我が国の指針に基づき、その利用目的ごとに安全性が確認される仕組みとなっています。


  この記事は農水省のホームページから抜粋(一部加工)したものです。この全文および厚生省の遺伝子組換え食品の安全性についてのQ&Aは下記のURLから入手できます。

(農水省)
http://ss.s.affrc.go.jp/docs/sentan/pa/anser.htm

(厚生省)
http://www.mhw.go.jp/topics/idenshi_13/index.html

 


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