フイルム判別法

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 プラスチックフイルムは、樹脂の種類によって包装用としての特性が異なるので、内容商品の性質に適合したフイルムを選択しなければ十分な包装の効果は期待できない。ある包装食品について、現状を評価し、適切な包装フイルムを選択するためには、まず、使用されているフイルムの種類を判別することから始まる。 ここでは、主要な包装用プラスチツクフイルムについて、簡単な判別法を紹介する。なお、厚み計、ピンセット、バーナー、ラミネートフイルムを剥離するための有機溶剤(モルホリン、酢酸エチルなど)、湯煎、試験管などを用意できれば都合がよい。

<外観・手ざわり・燃焼試験による方法>
 正確なフイルムの判別は、薬品や機器による定性分析、元素分析、吸収スペクトルなどによらなければならないが、これらの設備がない場合や急な場合は外観、手ざわり、あるいは燃焼時の観察により判別しなければならない。
 外観・手ざわりについては、@透明性がよいか、A光沢はあるか、B硬くて腰がある(パリパリした感じ)か軟らかい(しなやか)か、C伸びやすいか切れやすいかなどについて調べ、燃焼試験については、試験片をピンセットでつまみ、その一部をバーナーで燃焼させ、@よく燃えるか(燃焼の難易)、A炎から離しても燃え続けるか(自燃性)、B燃える状態(炎、煙、溶融状態など)、C炎を消したときの煙の臭い、D燃えカスはどうか、などについて観察する。
・ポリエチレン(PE)
 ポリエチレンには低密度ポリエチレン(LDPE)、中・高密度ポリエチレン(MDPE、HDPE)があり、さらに、LDPEには、一般LDPE、LLDPE、ポリ酢酸ビニルと共重合させたEVA、アイオノマーPE、EAA、EMAAなど多くの種類がある。高密度と低密度の区別は、前者は白色半透明なものが多く、腰が強くさらさらした手ざわりで、おしぼりの包装、スーパーのレジ袋など単体で使用されることが多い。一軸延伸したHDPE(OPE)は透明で、片方にだけ裂けやすく、ひねり包装に使用される。LDPEは非常にやわらかく、手で引張ると小さな力でもよく伸びる。袋詰包装食品に使用されているラミネートフイルムのヒートシール層に使用される。一般LDPE、LLDPE、EVA、特殊PEなどの詳しい判別は手ざわりや燃焼だけでは正確にはできない。これらは赤外分光々度計(IR)による方法が適している。 ポリエチレンを燃焼すると、滴下しながらよく燃え、ロウ(パラフイン)の匂いがするので他のフイルムと区別できる。また、比重が水より小さいのも判断材料の一つである。燃焼試験はスーパーのレジ袋、ごみ袋などで練習するとよい。
・ポリプロピレン(PP)
 PPは無延伸ポリプロピレン(CPP)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、Kコート延伸ポリプロピレン(KOP)が代表的である。CPPは単体またはラミネートフイルムのシーラントとして用いられる。引張るとよく伸び、伸びた部分と元の部分との差がはつきりとわかり、急激に引張ると伸びた部分がやや白色となる。この原理を利用したのがパールフイルムである。OPPは引張っても伸びず、手ざわりはセロハンに似ている。KOPは外観ではOPPと区別しにくいが、燃焼させると燃え端が黒色になるのでわかる。0PPは防湿性に優れており、印刷し、CPPとラミネートして防湿包装によく使用される。KOPはガス遮断性もよく、ガス充填、脱酸素剤包装に適している。PPは燃えやすく、セルロイドの燃える匂いがするので区別できる。延伸フィルムは焔を近づけると収縮する。PPの比重はPEよりさらに小さく、水につけると浮く。燃焼試験の練習にはポリプロピレンと表示された不要なプラスチック容器片があれば利用できる。
・ポリエステル(PET)
 このフィルムは透明性・光沢・耐熱性に優れ、手で揉むとパリパリと金属音を発する。食品包装に使用しているフイルムは延伸されており、厚さ12μが多い。ヒートシールが難しく、PEなどとラミネートして使用される。アルミレトルトパウチの構成はほとんどがPET/AL/CPPである。
 PETは、焔を近づけると収縮しながら燃焼し、かすかに独特の甘い匂いがする。Kコートフイルム(KPET)は燃え端が黒くなるのですぐにわかる。燃焼試験はペットボトルで練習できる。最近需要が多くなってきた透明蒸着は赤外分光々度計でもわからないので、バリヤー性測定などから判断することになる。
・ナイロン(ON)
 透明で一般には延伸した15μのものが使用されている。120℃までのレトルトに使用でき、低温にも強く、PEとのラミネートフィルムは冷凍食品の包装に最適である。また耐衝撃性、耐ピンホール性に優れているので水物や重量物の包装に適している。KONは燃え端が黒くなる。液体スープ、山菜水煮、糸こんにゃく、透明レトルト食品などの最外側フイルムにはほとんどがONを使用している。このフィルムの燃焼は毛髪の焼ける匂いがするのですぐにわかる。
・ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)
 PVCは軟質(可塑剤を添加し、加工しやすくしたもの)と硬質(無可塑)の2種に別けられる。軟質PVCは腰がなくしなやかで透明性がよい。業務用ストレッチフイルム、雑貨用として単体で用いられる。
 硬質PVCはセロハンに似た手ざわりで引裂きもセロハンと類似している。フィルムは収縮包装によく使用されている。PVCの燃焼は黒煙をあげ、強烈な刺激のある塩素臭がし、残渣が黄色いことで判別できる。炎からはずすと自然に消火する。
 PVDCはバリヤー性能が非常に優れており、Kコートフイルムのコート剤として広く用いられている。家庭用ストレッチフイルムのクレラップやサランラップもPVDCである。燃焼試験ではPVCとPVDCとの区別はできないのでモルホリンによる反応(褐変する)を利用する。

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・ビニロン系フイルム(PVA、EVOH)
 このフィルムは乾燥状態ではガス遮断性が非常に優れ、引張り強度も大きい。燃焼はナイロンと似て毛髪性の臭いがあるが、やや甘い匂いで、白っぽい残渣が残る。湿気の影響を受けやすく、熱水には可溶なので、食品包装には防湿性・耐水性のフィルムでサンドイッチにして使用される。例えば、けずり節はOPP/EVOHorBOPVA/PEの構成が多い。表基材として使用されることもある。PVAとEVOHの区別は赤外吸収スペクトルによる方法が確実である。
・ポリスチレン(PS)
 カップラーメンの保温容器や緩衝材としてのPSP、成型容器など広く使用されているが、OPS、HIPSなどフイルムとしても使用されている。ラミネートフイルムとしては少ない。燃やすと黒いススを出しながらよく燃えるのですぐにわかる。また、酢酸エチル、トルエンなどの溶剤に溶ける。
・ポリアクリロニトリル(PAN)
 防湿性は良くないが、酸素遮断性に優れ、樹脂は脱酸素剤やガス充填用成型樹脂として利用され、フイルムはこの容器のフタ材シーラントとしてPETなどとのラミネートで使用する。また、バリヤー中間材としても使用されている。日本でのメーカーは三井東圧化学一社である。フイルムは硬く腰があり、硬質のPVCに似ており、手で引きちぎりやすい。燃焼させると橙色の炎を出してよく燃える。燃えカスは黒い。
・セロハン
 セロハンは普通セロハン(PT)と防湿セロハン(MST)の2種に大別でき、PTは原料がパルプな
ので、熱によつて溶けることはなく、燃え方、煙の臭いは紙と全く同じである。MSTは、同様に紙のようによく燃えるが、PTの表面にプラスチツクを塗布してあるので、水をはじく。また一般にはヒートシールが可能であり、100℃近くのものに二枚重ねて押さえつけると表面の樹脂が融着する。燃焼させた場合、残渣の端が金色(MST)または黒色(K)に残る。
・ラミネートフィルム
 食品包装にはラミネートフィルムを使用することが多い。ラミネートしてあるかどうかを区別するには、一部に切り目を入れてゆっくり引張ると、裂けた部分が伸び率の違いにより二重になるので判別できる。しかし、ポリエチレン、ポリプロピレン以外の伸びにくい透明フィルム同士が貼合わせてある場合には、引き裂くだけでは判別が困難で、ラミネートしてあるかわからないことが多い。このような時には厚さを測定し、25μ以下なら単体フィルムである場合が多く、30μ以上なら、有機溶剤に時々浸漬しながら辛ぼう強く揉むと、ラミネートしてある場合には徐々に剥離してくる。あるいは、モルホリンに短冊の端を浸漬して加熱すると剥離しやすくなり、Kコートの有無もわかる。そこで外観、手ざわり、燃焼実験などを慎重に行う。
 印刷してある場合は、インキがサンドイッチになっていればラミネートフイルム、表刷または内面刷であれば単体フイルムであることが多い。共押出しフイルムは種々雑多あり、PE系、PP系、ナイロン系かどうかは燃焼試験でおよその判断は可能である。いずれにしても、既知の単体フイルムやラミネートフイルムでよく練習し、また、食品包装用フイルムの性質と用途をよく知っていれば、まとをしぼることもできるので、判断しやすくなる。

<薬品による判別>
 薬品による試験方法では、PET、ON、ビニロンPVC、PVDCなどを、主として呈色反応で判別できるが、試薬の安全性、取扱い知識を十分に確保した上で実施することが前提条件で、しかも既知のフイルムで熟練することが要求される。また、薬品や器具・設備は簡単に準備できるものではなく誰にでも推奨できる判別方法とはいえない。ここでは比較的便利で簡単に実施でき、反応もはっきりとしていてわかりやすいPVCとPVDCの判別法について紹介する。
・ポリ塩化ビニルとポリ塩化ビニリデンとの判別
 試料の少量を試験管にとり、モルホリン少量を加え、加熱するとポリ塩化ビニリデンは褐色を呈す。これは一般のKコートフイルムの区別に利用できる。ホルモリンは試薬として販売されており、試験管をそろえておけば誰にでもできる方法である。ただし、モルホリンは皮膚につかないように、加熱の際突沸して目に入ったり、やけどをしないように、湯煎を使用すること。
・プラスチックフィルムの溶解テスト
 プラスチックフィルムがどのような有機溶剤に溶けるかを知ることによって判別の補助的な手段となる。つぎに溶解テストの特徴を示す。
セロハン−−−−−水で膨潤、アセトンで防湿膜可溶
ポリエチレン−−−トルエンに熱時可溶
ポリプロピレン−−トルエンに熱時膨潤
ポリ塩化ビニル−−アセトンに一部可溶
ビニロン−−−−−熱水に可溶
ポリスチレン−−−トルエン、酢酸エチルに可溶
・塩化ビニル、塩化ビニリデンの確認
フィルムの少量を試験管にとり、ピリジン溶液を加えて加熱し、次に温いうちに2%カセイソーダアルコール溶液を少量加えると塩化ビニルおよび塩化ビニリデン系のものは褐色となる。防湿性セロハンの確認にも利用できる。
・ポリエステルの確認
 ポリエステルはアルカリに弱く、ポリエチレンのラミネートものはアンモニア水を包装して時間をおくと、ポリエステルの層だけが浸され、白化してから粉状に破壊される。また、試料を試験管にとり、そのままバーナーで加熱し乾留すると、冷後試験管の内側にフタール酸の針状結晶が析出する。
・ナイロンの確認
 試験管に試料0.1〜0.2gとり、脱脂綿でかるく栓をしたのち、試料を加熱分解して脱脂綿に吸収させる。次いで脱脂綿をP−ジメチルアミノベンツアルデヒドの1%メタノール溶液につけ、濃塩酸で酸性にすると赤色となる。この方法で、ポリカーボネートの場合は青色となる。
・ポリ酢酸ビニルおよびビニロンの確認
 試験管に試料をとり、ヨード・ホウ酸溶液(ヨウ化カリ0.15g、ヨウ素0.07gを水で100mlとした後、ホウ酸  0.5gを加える)を加えるとポリ酢酸ビニルは赤褐色を示し、ビニロンは青褐色を示す。
・Liedermann−Storch試験
試料を点滴板にとり熱無水酢酸数滴加え、さらに濃硫酸1滴を加える。20〜30分放置して、その間の色の変化を観察する。

プラスチック 呈    色
ポリ塩化ビニル 徐々に青色
ポリ塩化ビニリデン 徐々に黄色
ポリ酢酸ビニル 褐色−明るい緑色
塩ビ・酢ビ共重合 徐々に緑−青−褐色
ポリビニルアルコール 褐色−赤褐色

<赤外吸収スペクトルによる判別>
 今までに述べた方法で、食品の包装に使用されているほとんどのプラスチッツクフィルムを判定できるが、食品包装やプラスチックフイルムについての全般的な知識、既知の試料を使っての相当の練習も必要とする。ガスクロ、X線回折装置などいろいろな分析機器を用いて測定する方法はあるが、中でも、より正確に知りたい場合は赤外線分光々度計による方法が普及している。この機器は高価であり、科学者の研究用として分子構造の決定などに使われてきたものであるが、物質の同定、品質管理、反応速度の測定など、実用範囲は広い。この機器を用いれば、透明なラミネートフィルムはそのままで測定でき、またドライラミネートか押出しラミネートか、あるいは接着剤の種類まで判別が可能である。フィルムが印刷インキで不透明なものは溶剤でふきとって透明にしてから測定する。アルミ箔や蒸着フイルムをラミネートしたものもアルミや蒸着膜を剥離し、透明になったものを測定する。
  透明蒸着フイルムは無機系の酸化珪素や酸化アルミを蒸着しているので、赤外線(IR)では検出できない。科学的に判別するには元素分析が必要となる。


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