ISO22000

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はじめに

   過去にはヒ素ミルク、カネミ油の大事件があり、さらにはカラシれんこん、O−157,残留農薬、BSE、鳥インフルエンザなどの問題が次々と発生、例を挙げたらきりがない。最近では健康食品で死亡するという事件まで起こっている。消費者の食の安全に対する信頼はまだまだ遠い存在である。いまや、食品メーカーにとって、消費者が安心して購入できる食品を提供することが企業存続のための第一の条件になっている。さらに、食品業界が取り組むべきテーマとして、「コンプライアンスを遵守する(compliance / 法令遵守)」「社会的責任(CSR−Corporate Social Responsibility)を果たす」という企業としての新しい姿勢が問われるようになった。
 このような状況の中、2005年9月、ISO22000:食品安全マネジメントシステムが正式に発行された。そこでISO22000とはどんなものかについて考えてみる。

ISO22000の予備知識

   ISO22000は食の安全を確保するための国際規格である。その基本的なマネジメントシステムはISO9001から、食品の安全性に関することはHACCPシステムからの手法を取り入れている。したがって、すでにISO9001を取得し、HACCPの承認を得ている場合はISO22000も取得しやすいが、ISO22000=ISO9001+HACCPではないことは理解しておきたい。

ISO9001との関係は

  ISO9001とは品質管理に関する国際規格であり、食品メーカーの場合、おいしさなど顧客満足度も追求するならISO9001を、食品の安全のみを考慮するのであればISO22000だけでいい。また、ISO9001とISO22000の両方を取得しなければ意味がないという意見もある。ISO22000ではABC3つの付録が添付されており、付録BでISO9001とISO22000の構成対応表が示されている。

HACCPとの違いは

   HACCPは、もともとはアメリカ・NASAの宇宙飛行士が、食中毒等、食品に起因するトラブルに遭遇しないようにと考えられたシステムで、ヨーロッパ各国、日本、韓国などでも規格化されている。HACCPは国際規格ではないので、各国で内容が少しずつ違う状態になっている。我が国でも、食品衛生法によって、HACCPの手法を導入した「総合衛生管理製造過程」を定め、この衛生管理を行っている事業所の任意承認制度を実施している。しかしながら、食品衛生法によるHACCPは主として原材料の入荷から製造工程、出荷までのHACCPにとどまっているのに対し、本来のHACCPは農場から食卓まで(from farm to table)の危機管理を目指しているところに大きな違いがある。このような状況で、国によってバラバラだった内容を統一し、2005年9月に国際規格として発行したのがISO22000である。

HACCPをもう少し詳しく

ISO22000の骨格となるHACCPを、食品製造業者を例として説明すると、次のようになる。

   HACCPとはHazard Analysis and Critical Control Point(=危害分析・重要管理点)の略で、従来の、最終製品の検査や場当たり的なチェックといった衛生管理とは異なり、食品の製造において、原材料から最終製品に至る一連の工程が管理の対象になり、どこの工程でどのような危害が発生するかをあらかじめチェックし、それを防止するための監視、管理基準を定め、すぐに確認できる方法で測定、記録し、得られた結果について即刻対処できるように手順を定めるもので、衛生的で安全な食品を製造し、消費されるための衛生管理システムである。
   衛生管理を行う手順は、誰でもわかるようにマニュアルにまとめ、マニュアルに従って実行したことは必ず記録に残すことが基本となっている。

HACCP導入の7原則

(原則1)危害分析(HA)
(原則2)重要管理点(CCP)の設定
(原則3)管理基準の設定
(原則4)モニタリング方法の設定
(原則5)改善措置の設定
(原則6)検証方法の設定
(原則7)記録保存及び文書作成規定の設定

・原則1の危害分析とは、各段階で起こりうる生物的、化学的、物理的危害を予測し、防止対策を考えることである。

・原則2は、原則1で分析した危害のうち、特に重要なポイントについて重要管理点(CCP)を設定する。

・原則3では、CCPにおいて、どういう条件を管理するかの基準を定める。例えばハンバーグでO−157に汚染されていないことを証明するためには、微生物試験ではすぐには結果が出ないので、殺菌温度、殺菌時間、ハンバーグの大きさなどがO−157非汚染のための管理基準となる。

・原則4では管理基準で定めた項目を測定するための方法、頻度等を定める。

・原則5では、モニタリングすることによって、管理基準を逸脱した場合、その原因追求と改善措置をあらかじめ決めておく。

・原則6では、HACCPでの衛生管理が正常に機能しているかどうかの検証方法を設定する。検証者、方法、頻度、結果の記録などもプランに含める。

・原則7は、今までに決めたこと、実施してきたことを記録し、保存することによって、検証等に活用できるだけでなく、HACCPを適切に実施し、衛生上安全な食品を製造してきたことの証明になる。

   以上の手順については、欠点がないようにかなり細かく計画するために、専門家のアドバイスが必要になることが多い。

ISO22000の中身は

要求事項の構成は基本的にはISO9001と同じであるが、ISO22000は食品安全マネジメントシステムの構築及び改善が目的なので、HACCPを軸とした規格となっている。下記要求事項一覧では項目7と8に大きな特徴が示されている。

<要求事項一覧>

1 適用範囲
2 引用規格
3 用語及び定義
4 食品安全マネジメントシステム
  4.1 一般要求事項
  4.2 文書化に関する要求事項
5 経営者の責任
 5.1 経営者のコミットメント
 5.2 食品安全方針
 5.3 食品安全マネジメントシステムの計画
 5.4 責任及び権限
 5.5 食品安全チームリーダー
 5.6 コミュニケーション
 5.7 緊急事態に対する準備及び対応
 5.8 マネジメントレビュー
6 資源の運用管理
 6.1 資源の提供
 6.2 人的資源
 6.3 インフラストラクチャー
 6.4 作業環境
7 安全な製品の計画及び実現
 7.1 一般
 7.2 前提条件プログラム(PRPs)
 7.3 ハザード分析を可能にするための準備段階
7.4 ハザード分析
 7.5 オペレーションPRPsの設定
 7.6 HACCP計画書の設定
 7.7 事前情報及び、PRPs及びHACCP計画書を規定した文書の更新
7.8 検証計画
 7.9 トレーサビリティシステム
 7.10 不適合の管理
8 食品安全マネジメントシステムの妥当性確認、検証及び確認
 8.1 一般
 8.2 管理手段の組み合わせの妥当性確認
 8.3 モニタリング及び測定の管理
 8.4 食品安全マネジメントシステムの検証
 8.5 改善

付録A 規格の使い方の指針
付録B ISO22000:200XとISO9001:2000との対応(共 通点)
付録C 一般的衛生管理プログラム(PP)を含む管理方法の事例とその選択と利用のための指針として用意されたCodex文献
参考文献

ISO22000の対象業種は

   当面は食品製造業者が対象になるが、この国際規格はフードチェーン(食品供給行程)内で発生が予測できるすべてのハザードを明確にし、評価することを求めている。

−ISO22000の対象範囲−

・食品製造業者(農作物・穀物ほか)
・輸送・保管・流通業者
・飼料製造業者
・原材料・添加物関連製造業者
・食品加工業者(一次加工、二次加工ほか)
・包装資材業者
・農薬・肥料・動物医薬品製造業者
・卸関連業者
・清掃・サニタリー・洗浄剤関連業者
・卸売・小売業者
・その他サービス業者
・食品サービス業者

ISO22000取得のメリットは

@食品の安全性が向上する
 危害分析を行うことで、従来の製造方法の見直しが、重点的に管理すべき個所を従業員が明確に把握することができるため、今まで以上に安全な食品が製造できる。
A競争力が強化される
 O157等による食品の危害を防ぐため、営業者はより安全な食品を仕入れるようになる。このため、ISO22000を導入して生産された安全な食品は、そうでない食品に比べ明らかに競争力の強い商品となる。
  また、不良品発生率も低下し、事故に伴う損害賠償や不良品回収の危険が小さくなって、結局は経済的にも有利である。
B組織全体の意識が一体化する
 経営者、現場責任者、作業従事者がー体となって取り組むことによって、組織全員の製品に対する理解や衛生知識の向上が期待できる。
C経験が科学で裏付けられる
 これまで、特定の技術者が経験的に獲得してきた技術を科学的に裏付け、分かりやすくマニュアルをつくることによって、経験の浅い人でも品質向上や食中毒などの危害防止に高い意識を持つことができる。

D安全性が持続する
 最初に完全なシステムを作っていても、時間が経つと徐々に崩れていくことはよくあること。しかし、ISO22000を取得し実践すると、計画通り実行されているかを科学的な手段で定期的に把握し、必要に応じてシステムを変更するため、衛生水準が維持され安全性を保つことができる。

ISO22000の取得の方法は

   一般にはISO9001やISO14000と同じく、民間の第三者認証機関が審査することになる。審査そのものの仕組みは審査機関や受審企業の業種・規模などにより異なる。コンサルタント等、専門家の指導を受けながら取得することになる。
   ISO22000が発効して間もないが、認定機関及び審査機関の審査体制の準備作業が規格の正式発効と並行して行われてきたため、実際の認証体制はすでに整備されていると考えてもよい。

(参考文献)
ISO22000のすべて」 萩原睦幸著 日本実業出版社


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