カビ防止方法

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  5月になり、包装食品にとってはカビ発生のシーズンである。カビによる事故をなくし安心できる包装食品を、と考えている食品メーカーは多いはず。カビ発生を防止するためにはまずカビの弱点を知ること。また、包装フイルムの種類と性質の勉強も必要となる。つぎに包装によるカビ防止技術にはどんなものがあるか、どれを採用すべきかを決定しなければならない。どんなに研究しても完全に防止できるものではないが、より確実な方法を実施したいものである。

■カビの種類と生育条件

   カビは、人間が意識的に無菌の状態をつくらない限り、空気中、水中、土譲、食品表面や内部などいたるところに存在する。カビの種類は多く、それらの働きを左右する因子は水分、温度、酸素、水素イオン濃度、浸透圧などがあり、複雑である。

<カビの種類>
 最近はカビによる害がよく研究され、特に発ガン性を持ったカビ毒(マイコトキシン)をつくり出す種類も数多くあることがわかってきて、食品衛生上大きな問題になっている。それだけに食品メーカーにとってカビ防止対策は何にも増して大きな課題なのである。カビは3μ程度の厚さの菌糸を持って栄養増殖を行い、後に胞子を生ずるものが多い。

クラドスポリウム属(Cladosporium)

土壌、空気中に広く分布する。モモ、ビワなどの果実、野菜、穀物、カステラ、もなか、ようかんなどの菓子類、バター、チーズ、練乳などの乳製品によく生える。また食品工場内では天井、壁に付着していることが多い。厚いビロード状の暗色集落をつくる。

アスペルギルス属(Aspergillus)

こうじカビのことで、発酵に用いるコウジ菌とは形態的に類似し、いわば野生のコウジである。アスペルギルス属には日本酒、しょうゆ、みそなどの醸造に用いられる有用菌もあるが、恐ろしいカビ毒をつくりだす菌も多く存在する。たとえば、A.flavusという菌はうぐいす色の集落となり、発ガン性カビ毒のアフラトキシンを生産する有害菌である。醸造に用いられるA.oryzaeはカビ毒を生産しないことが確認されている。集落の色はまちまちだが、緑のきれいなカビが多い。土壌、農作物、加工食品、工業製品、空気中などに広く常在している。生菓子では水ようかん、大福もち、まんじゅう、カステラなどによく生える。

ペニシリウム属(Penicillium)

 ペニシリウム属は、ペニシリンの生産、チーズやサラミソーセージの熟成に用いられる種類もあり、種々の食品の変質、腐敗に関与する代表的なカビでもある。青かびとして知られ、自然界に広く分布し、野菜、果実、貯蔵米、もち、パン、めん、煮豆、あん、生菓子、液糖、氷果、ジャム、水産ねり製品、さきいか、卵、乳製品など多くの食品に生えやすく、冷蔵庫、食品工場の空気中に広く常在している。特に酸性の生菓子、例えばもなかやレモンケーキなどに生えやすい。集落の色調はほとんどが緑系(青緑、灰緑、黄緑、暗緑など)である。

カテヌラリア属(Catenularia)

 好浸透圧性のカビで、チョコレート色の集落が特徴である。もなか、ようかん、加糖練乳、もち菓子等に生えやすい。集落の表面は褐色ビロード状である。生育速度は小さい。和生・半生菓子の工場に多い。

ムコール属(Mucor)

ケカビとよばれるカビで、毛髪状に生育することから、この名前がある。土壌中に存在し、野菜、果実についていることが多い。また、もち、パン、卵、乳製品、冷蔵肉などの多水分食品に生えやすい。水分が多いと生育が非常に速い。集落は灰色〜黒色で、低温でもよく生育する種類が多い。

リゾープス属(Rhizopus)

 クモノスカビ。白い綿状集落と黒い胞子塊を形成する。ムコールと同じく、生育が非常に早い。野菜、果実、パン、めん、冷蔵肉、卵、乳製品、べーコンなど、水分の多い食品によく生える。

<カビの生育条件>
  カビの生育条件としては微生物の中で最も水分が少なくて生育ができ、一般に湿度80%RH以上、水分にして15%以上である。しかし、カビの種類によって要求水分量が違い、湿度が低くなるにしたがってアスペルギルス属が殆んど占めるようになる。中には湿度が62〜63%RH、水分にして13〜14%でも生育するものがある。したがって食品の水分含量が10%近く、あるいはそれ以下であればカビ発生の心配はない。またカビは澱粉質の食品に繁殖しやすく、米、小麦、あるいはこれらの加工食品は、普通は、平衡水分が13.5〜15.5%であるから高温多湿の空気中に放置しておくとカビが繁殖する。乾燥米菓などは水分が4〜8%であるから心配はないが、吸湿して水分が13〜14%となるとカビが発生する。しかし、カビが発生するまでに、吸湿により商品価値は失われる。また、パン、カステラ、生・半生菓子などは水分が30%付近にあり非常にカビが発生しやすい。
  カビの最適温度は25〜30℃で、15℃以下あるいは40℃以上になると増殖率は低下する。しかし、家庭用冷蔵庫(0〜5℃)でも、増殖の速度は小さいが繁殖する。耐熱性は60℃までで、60℃では10分から15分程度で死滅する。しかし、ある種のカビは胞子をつくり耐熱性があるため、殺菌するのが非常に困難である。通常の菌の胞子で100℃、5分間に耐えれるものは珍しくない。カビは酸素がなければ生育できない。酸素濃度を1%以下にまで下げると生育は著しく抑制され、0.1%では少数の限られた菌種のみがわずかに生育できるだけである。したがって、酸素濃度1%以下にすれば安心できる。カビの生育可能PHは1〜11で、一般にはPH5〜6においてよく生育する。カビの胞子の発芽はPH3〜7の間で行われる。

 

■カビ発生防止のために必要なフイルム

   カビは酸素ガスが存在しなければ生育できないので、ガス充填包装にしても脱酸素剤包装にしても、包装フイルムは酸素ガスを通さないことが第一条件である。また、完全密封するためのシール性、輸送中の耐ピンホール性も要求される。

<ガスバリヤー性フイルム>
・アルミ蒸着フイルム
   プラスチックの表面にアルミニウムの蒸気を付着させたもので、バリヤー性が向上する。PET、OPP、CPPなどの蒸着品がよく使用されている。特に蒸着PETのバリヤー性が優れている。アルミ箔よりもきれいな金属光沢を持ち、高級イメージを付与することができる。
  パスター加工やシーライト加工のように、任意の形で透明な窓を付与することもできるがバリヤー性は落ちる。

・透明蒸着フイルム
   フイルム(主としてPETフイルム)の表面にシリカ(SiOx)やアルミナ(Al2O3)の蒸気を付着させたのが透明蒸着フイルムである。シリカはガラスと同じ成分、アルミナは酸化アルミニウムで、両方とも透明な被膜を構成し、バリヤー性が大幅に向上する。透明蒸着フイルムはガス遮断性と防湿性の両方とも優れているので、Kコートフイルムの代替品として多く使用されている。

ポリビニルアルコール(PVA,ビニロン)・EVOH系・その他
   KOPの代替として登場したのが高防湿OPPにPVA(ビニロン)をコートしたAOP(トーセロ)やXOP(ダイセル)である。KOPと違うところは、高湿度条件で酸素ガスバリヤー性が落ちることである。水もの、ボイルもの等の包装には適さない。最近ではナノテク、ハイブリッドなどの技術を利用したコートで、高湿度でも酸素ガス遮断性が低下しにくいコートフイルムが各社で開発されている。
   ビニロンを二軸延伸したボブロンフイルム(日合フイルム)もあり、けずり節包装のバリヤー材として、OPP/O−PVA(ボブロン)/CPPなどの構成で使用されている。もちろん単体フイルムでは防湿性、耐水性はない。
  EVOHはエチレンとビニルアルコールの共重合体で、クラレのEVOHフイルム(商品名:エバール、EVAL)が代表的である。二軸延伸エバールもある。ビニロンと同じで高湿度でバリヤー性は低下するが、ビニロンより程度は小さい。防湿性はない。OPP/EVAL/CPP、ON/EVAL/PEなどの構成で、けずり節、味噌など、酸素を遮断しなければいけない包装に、ハイバリヤーフイルムとして使用される。
 EVOH樹脂はPE/EVOH/PE、Ny/EVOH/PE、PE/Ny/EVOH/PEなど、共押出しフイルムとして深絞り包装によく使用されている。
   OPP/EVOH/OPP共押出(二村化学)、ON/EVOH/ON共押出(グンゼ、ユニチカ)などの延伸フイルムもある。

MXD(メチルキシリレンジアミン)系
   メタキシリレンジアミンとアジピン酸を重合させたものがMXDで、ON/MXD/ON共押出しフイルムが、Kコートナイロンの代替としてよく使用されている。酸素遮断性はKコートフイルム並であるが、防湿性はよくない。

アルミニウム箔
   食品包装用に中間層バリヤー材として使用されるのは軟質アルミである。一般には7μが使用されるが、ピンホールが心配されるので9μもよく使用される。
  ガスバリヤー性、遮光性、防湿性はほぼ完全であるが、中身の見えないことが大きな欠点になるときもある。

<低温シール性シーラントフイルム>

 低温シール性シーラント使用における利点には次のようなものがある。

@自動包装の場合、ベースフイルムとの温度差が大きくなり、適正なシール温度範囲が広くなるので不良率が低くなる。
Aダーツ、夾雑物によるシール不良が少なくなる。
B自動包装で、包装スピードのアップが可能になる。
C製袋品、包装物で、低い温度でシールできるため収縮しにくく、仕上がりの外観が良好である。
  低温シールタイプのLLDPEは、シール温度以外に、ホットタック性、耐衝撃性、きょう雑物シール性も優れている。
  メタロセンポリマーはLLDPEの一種として分類されるが、シングルサイトの触媒を用いて重合し、分子量分布が均一になっているのが特徴で、LLDPEの長所に加えて臭気、耐ブロッキング性、経時安定性などに優れている。
  CPPフイルムにも低温シールタイプや超低温シール性タイプがある。PP樹脂の性質上、PEよりは柔軟性がなく耐衝撃性に劣るので、液体包装ではあまり使用されていない。腰の強さ、透明性などに勝っており、菓子包装などに多く使用されている。

■カビ防止のための代表的な包装技術

<ガス充填包装(ガス置換包装)>
   ガス充填包装とは、食品等を不活性ガス中に保持し、空気中の酸素による好ましくない変化を阻止しようとする包装である。
   カビ防止のためのガス充填包装には二酸化炭素(炭酸ガス)が有効である。二酸化炭素には、窒素ガスにはない静菌・防虫作用があって、好気性菌、カビ、害虫などの発生を抑える力がある。二酸化炭素ガスをもちいたものは生肉、ウィンナーソーセージ、和・洋生菓子、半生菓子、豆類、穀類などのカビ防止に効果を発揮する。
   しかし、二酸化炭素は、水にも油にも溶解し、水溶液中においては微酸性を呈し、食味に影響することがある。また、窒素に比べてフイルムを透過しやすく、袋の外に逸散してしまうので減圧になりやすい。そこで、酸味と減圧を低減するために窒素+二酸化炭素の混合ガスを用いる場合もある。袋内に酸素ガスが存在していても、二酸化炭素濃度が30%であれば一応の効果があり、50%以上でほとんどのカビは防止できる。

<真空包装>
  袋に内容品を充填し、真空下で密封シールするのが真空包装である。袋内の空気を除去するので、内容品にフイルムが密着し、外気の酸素ガスの影響を受けにくくする。ボイル殺菌・レトルト殺菌などに適している包装形態である。佃煮、漬物、ういろ、ようかんなどにはよいが、ケーキ、半生菓子など、形状が破壊されるような食品には適さない。フイルムの酸素透過度が大きいと透過してくる酸素量も多くなるので、バリヤー材を使用した方がよい。

<脱酸素剤封入包装>
  内容品とともに脱酸素剤(酸素吸収剤)を同封し密封するもので、一定時間内で袋内酸素は0.1%以下になる。外気から透過してくる酸素も脱酸素剤が吸収するので、常に低酸素状態が持続するのが真空包装やガス充填包装とは異なる。
  特別な装置は必要がないので手軽に採用できる方法であるが、自動投入機を利用すれば自動包装機でスピードを落とさずに包装できる。
  最近では酸素ガス検知剤を同封して、脱酸素されているかどうか、簡単に判別できる商品も増えている。

<アルコール製剤封入包装>
   エチルアルコールを主成分とした保存剤で、カビ防止には有効である。しかし、内容食品にアルコール臭が吸着するおそれがあるので、利用できる食品は限定される。水分活性が低いほど効果が大きい。包装材としてバリヤー材は必要としない。PET構成が安心できるが、OPP/CPPでもよい。ただし、ナイロン系はアルコールをよく通すので適さない。

<無菌包装>
   高温短時間加熱殺菌した食品あるいはフィルターで除菌した食品を、あらかじめ殺菌した包装材料を用い、無菌室で包装する方法が無菌包装である。食品成分の劣化を少なくし、できたての風味を保持させることができる。生ゼリー、コーヒーフレッシュ、ヨーグルト、切り餅、生ハムなど、多くの食品で採用されている。

 

■カビ発生事故例と対策

<段ボール、化粧カートンとの擦れによるピンホール>
   ザラザラとした段ボール、厚紙の壁面は紙ヤスリと同じである。袋の折れ曲がった先端が輸送中に壁面と擦れてピンホールが生じるという事故は今でも多発している。わずか数百メートルの輸送でも発生することがある。
   防止策としては包装フイルムの選定、袋形状の変更、段ボールケースのサイズと詰め方を変更する、フイルム又は緩衝剤を用いて壁面との直接接触を避ける、などがある。
  フイルムの選定では、PET/ON/LLDPEなどの三層フイルムで実績があり、二層フイルムでは腰の柔らかいものがよい。
 袋形状では四方袋、4本柱など、壁面にはシール部があたるようにする。
  段ボールサイズに余裕をもたせ、輸送中の振動でも商品の同じ場所が長く接触しないような詰め方も有効である。

<ガス充填不良>
   ガス充填ミスによってガス置換率が低く、カビが発生したという事故も時々ある。袋は完全密封されており安心していたら、ガス充填されておらず、実は空気だったということもある。バリヤー材で密封状態でも、袋内空気だけでカビは発生する。このときのカビの生え方は小さいが、1袋だけではすまず、大量に発生する危険性がある。定期的に袋内ガス組成の分析、ガス充填装置の点検を実施することが必要である。

<突刺しによるピンホール>
   プラスチックフイルムは数十ミクロンという薄さであり、鋭利な先端には弱い。何らかの拍子にピンホールが生じる事故はありうる。包装機のパーツやシュート付近、台紙や脱酸素剤の四角の切り口も要注意である。袋同士でピンホールが生じることもある。身の回りをみてもフイルムに傷をつけるものはたくさんあり、取り扱いには十分注意を払う必要がある。フイルムとしてはナイロン(ON)構成が耐突刺しピンホール性に優れている。

<シール不良>
   製袋時、充填シール時、自動包装時のシール密封不良がよく起こる。作業開始前後および運転中にも一定の間隔で必ず密封検査をする必要がある。
   一般には水中でのエアもれ、検査液(例:エージレスチェッカー)による方法が行われている。ピンホール検査機による方法もあるが装置が高価である。
   フイルムは低温シール性のLLDPEかメタロセンPEが安心できる。商品の形状や包装機によっては低温シール性CPPも十分に使用できる。

<その他の不良>
   まれに脱酸素剤の不良もある。脱酸素剤そのものの不良、期限切れ、保管不備、使用方法の間違いなどがある。
   乾熱殺菌やボイル殺菌では温度と時間の設定ミスが多い。必ず内容品の中心温度が所定の温度になってからの時間を設定しなければならない。

■ピロー包装機の選定

   包装機を変更することは簡単ではないが、新規に設置する場合にはガス充填や完全密封に適したものを選びたい。シール方式は、少しでもシール時間の長いボックスモーションタイプがよい。回転シールの場合は警戒が必要で、スピードを落としたり、フイルムを完全密封しやすいものに変更することなどが必要になる。

■カビ防止のためによく使用されているフイルム構成の例

ハイバリヤー透明蒸着PETやボブロン、EVAL構成のフイルムは酸素ガス透過度が10ml/u・d・MPa 程度で、CO100%充填に使用できる。PVAコートOPPは酸素ガス透過度100ml/u・d・MPa 付近でNとCOの混合ガス充填や脱酸素封入包装に適している。
 以下に、よく使用されるカビ防止のためのフイルム構成をまとめた。

ガス充填包装、脱酸素剤封入包装

透明蒸着PET、バリヤーON、バリヤーコートOPP・PET等の基材使用

アルコール製剤封入包装

OPP/CPP、PET/CPP、各種バリヤー材/CPPまたはPE

突刺しおよび擦れによるピンホール防止包装

透明蒸着PET/ON/LLDPEPET/バリヤーON/LLDPE

完全密封するために

低温シール性LLDPE、低温シール性CPPなどのシーラントを使用

 


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