包装食品のピンホールの原因と対策

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はじめに
   プラスチックフイルムは、一部を除いて、破ろうと思っても素手では簡単には破れない。一見、非常に強靱なものという印象がある。しかし、ビンや缶と違って、故意に穴をあけようと思えば簡単である。針やナイフで刺したり、ライターの火で焼いたり、木やガラスのとがったもので突き破ったりして簡単にピンホールを生じさせることができる。数十ミクロンという厚さゆえに、簡単な道具ですぐに破れてしまう。また、故意でなくとも、包装食品の周りには危険がいっぱい、ピンホールの問題は昔も今も続いているのである。6月、カビとの戦いはもう始まっており、ピンホールの原因についてよく理解し、対策は万全にしたい。

ピンホールの分類
 包装フイルムにピンホールが生ずる原因はさまざまであるが、大別して、突刺しによるピンホール、摩擦によるピンホール、屈曲疲労によるピンホールの3つに大別できる。

突刺しによるピンホール
   数十ミクロンという厚みは、基本的に突刺しには弱い。3階から落としても割れないような丈夫な袋でも針先にはかなわない。ほとんど抵抗なく、いとも簡単に穴があいてしまう。包装工程や流通過程でも危険がいっぱいである。その例を示す。
@包装袋のカット部エッジによるピンホール
 液体スープの小袋などで、包装機から出てきた小袋のカット部の角が、他の袋の平坦部にあたり、ピンホールが生じる。
A個装内に封入された脱酸素剤、乾燥剤などの小袋エッジが袋内面に突き刺さり、ピンホールが生じる。
B小袋内のトレイのエッジやバリが袋の内面にあたり、ピンホールが発生する。特にポリスチレンのトレイは硬く割れやすいので危険性が大きい。
C冷凍食品、ポテトチップスや米菓の破片、串付ダンゴや骨付き魚などの真空包装、氷など、食品でも硬くて鋭利な先端のあるものは数多く、それだけに危険性が大きい。
 突起物による突刺しピンホールを表面顕微鏡で観察すると、突起物先端の大きさで割れ目が入っている。また、表からの突刺しなら裏面に、内面からであれば表面に返しの凸部ができているので、指先で表面を触るとどちらの面から突き刺さったかがわかる。
 突刺強度の試験法は、食品衛生法ではつぎのように定められている。「試料を固定し、試料面に直径1.0mm、先端形状半径0.5mmの半円形の針を毎分50±0.5mmの速度で突刺し、針が貫通するまでの最大荷重を測定する。」。また、レトルトパウチのJAS規格では「袋状容器の突刺し強度が直径1mm、先端半径0.5mmの針で突き刺したとき0.6kg以上あること」とされている。図1は突刺し強度測定の模式図である。



図1.突刺強度測定模式図

 表1には各種フイルムの突刺強度を示した。延伸フイルムが厚いほど大きい値を示し、柔らかいシーラントフイルムは厚みを増しても突刺強度は上がらない傾向にある。

表1.各種フイルムの突刺強度(サンコー法)

フイルム  基材面から
PET12/LLDPE50  1.2 kg
ON15/LLDPE50  1.2
OPP20/LLDPE30  1.4
耐ピンホール性SN#15/LLDPE60  1.4
KON15/LLDPE70  1.5
PET12/ON15/PE20/LLDPE30  1.7
PET12/VMPET12/CPP30  1.7
ON25/EVA60  1.8
ON15/ON15/LLDPE50    2.3
OPP20/BOPVA14/PE60  2.5
OPP50/CPP40  2.6

摩擦によるピンホール
  ナイロンロープが開発されたとき、引張強度などの物性を調べた結果、こんなに強いロープは何に使っても大丈夫ということで山登りのロープとして利用された。ところが、転落事故が連続して起こり、調べた結果、岩などとのこすれには非常に弱いことが判明した。引張強度は非常に大きいのにこすれには非常に弱いのである。屋外で、延伸PPのひもを切るのに、岩やセメントなどにこすりつけるのは、経験的に知っていることである。これと同じような現象が包装食品でも起こっている。
   脱酸素剤封入包装やガス充填包装でカビが発生する原因として、化粧箱や段ボール箱の内面との摩擦によって生じるピンホールが非常に多い。袋の折れ曲がった先端が、輸送中の微振動によって、紙箱の内壁とこすれてピンホールが発生するのである。液体小袋でも液もれの原因として段ボール内面とのこすれによるものが多い。特に、カットせずに帯状になったものを段ボールに詰める場合は、折り目の先端位置が固定されてしまうので危険性が大きい。真空包装品が真空もれを起こす、バッグインボックスでの液もれが起こるなども原因はこすれによることが多い。段ボール、化粧箱などの紙面はヤスリと考えた方がよい。
 ピンホール部分を観察すると、周囲が摩擦熱で熔けたようになっているのが特徴である。また、穴につながった折れ目が数本見えることが多い。

  機械による折れ目の耐摩耗性評価は難しい。測定装置はあっても結果がばらつきやすく、実用的に評価できるものは見あたらない。摩擦によるピンホールを防止するには、つぎのような対策が有効である。
@緩衝材を入れる、フイルムを敷く、段ボールに詰める場合の詰め方を工夫するなど、紙面と袋の折り目とを接触させない。
A箱の内面を平滑なものに変更する。
B合掌袋なら四方シールに、ガセット袋なら四本柱シールに変更するなど、袋の折り目を少なくする。
C摩擦に強いフイルムを採用する。
などである。
 表2には各種フイルムのこすれによる耐ピンホール性を示した。突刺強度と同じく、延伸フイルムの厚みが大きく影響し、特にPET/ON/LLDPEの構成で優秀な結果を示した。構成を変えることによって摩擦によるピンホール問題を解決した例は多い。
@カステラ(ガス充填包装)
 KON15/LLDPE50PET12/SN15/メタロセンPE40
Aフルーツソース(液体)
 ON15/LLDPE70PET12/ON15/LLDPE70
Bバウムクーヘン(脱酸素剤包装)
 KPET#12/EVA50OPP20/KPET#12/LLDPE40
C液体小袋(液体スープ)
 ON15/LLDPE50OPP20/ON15/LLDPE40
 上の例を見ても、延伸フイルムを2層構成にすると非常に良好な結果が得られる。
 このほか、ガセット袋の折り目部分をすべてシールしてしまう、4本柱袋にすることで、全くピンホールが発生しなくなった例もある。また、確実な方法ではないが、ドライラミネートから押し出しラミネートに変更してフイルムを柔らかくすれば、折り目先端が丸まりやすいので結果的にピンホールは減少する。

屈曲疲労によるピンホール
 飛行機が金属疲労で墜落したことは有名である。針金を同じところで何回か折り曲げていると切れるのも屈曲疲労である。プラスチックフイルムでも、同じ部分で同じ運動を繰り返すと、ついにはそこにピンホールが発生する。輸送中の同じ運動で生じることが多いが、製袋加工や包装機での折り加工など、繰り返して行われる作業でも発生しやすい。特に硬いプラスチックやアルミ箔ラミネートフイルムで顕著である。一般の包装食品ではこのような過酷な取り扱いを受けることは少ないので、屈曲疲労によるピンホール事故は比較的少ない。屈曲疲労によるピンホールはピンホールの周囲に多くの小さな折り目が集中し、激しく伸縮が繰り返された様子が見える。

表2.各種フイルムの耐摩擦性

フイルム /摩擦回数    少←摩擦回数→多
KPET12/PE/EVA70 × × × × × ×
PET12/ON15/LLDPE70 ×
OPP50/CPP40 × × × ×
PET12/PE15/AL9/PE50 × × × × ×
OPP20/LLDPE30 × × × × × ×
SN15/PELLDPE60 × × × × ×
ON15/LLDPE50 × × × × × ×
ON15/ON15/LLDPE50 × ×
NY/PEチューブ70 × × × × × ×
VMPET12/CPP25 × × × × × ×
PET12/SN15/LLDPE40 ×
PET12/SN25/PE20/LL30 ×
SN25/PE20/LLDPE30 × × × ×
OPP/ON15/LLDPE40 × ×
OPP/PET12/CPP30 × ×

SN:バリヤー性延伸ナイロン(ON/MXD/ON

 (評価)

○:ピンホールなし ×:ピンホール発生

 (試験方法)

  サンコー法による。フイルムに45度の折り目をつくり、折り目先端を段ボール壁面に往復40〜100回こすりつけ、ピンホールができたかどうか調べた。この場合、折り目の内側に着色液を入れておくとピンホールの発生がわかりやすい。手による摩擦なので、折り目先端にかかる加重が大きいと先端が折れて丸まってしまったりする。結果はばらつきやすいのでn数を多くし、相対評価とした。熟練が必要である。

包装食品のピンホールをチェックする装置
 最近は包装されたものにピンホールがないかどうかを確認する装置も発売されている。オフラインだけではなく、インラインに組み込めるものもある。検出原理は、
@包装品を真空チャンバーに入れ、減圧度の変化をキャッチするもの.
A包装品の通電性を検出するもの.内容物に通電性が必要である.
B炭酸ガス(二酸化炭素)置換包装で、二酸化炭素を検出するもの.
などである。まだ価格も非常に高く、適用包装物にも制限があるので、簡単には採用できないケースが多い。

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