食品包装用ビニロン系フイルム

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ビニロンの概要

   数多くあるプラスチックの中で、世界に先がけ、日本で初めて工業化(1950年 潟Nラレ)されたのが、合成繊維としても有名なビニロン(ポリビニルアルコール、ポバール、PVA)である。
   ビニロンは重合した酢酸ビニルをケン化して製造するが、そのケン化の度合いや応用技術によって、接着剤、水溶性フイルム、感光性樹脂、繊維そのもの、繊維包装用、食品包装用フイルムなど、多くの種類が製造されている。食品包装用として利用されるビニロンは、ケン化度99%以上、通常完全ケン化物といわれるものである。現在ではエチレンと共重合して耐水性などを改善したエチレン−ビニルアルコールランダム共重合樹脂(EVOH)の比率のほうが高いと思われる。これもビニロン系である。
  食品包装用ビニロン系フイルムとして代表的なものには、
 ・二軸延伸ビニロン(O−PVA)「ボブロン」(日本合成化学工業鰍フ商品名)
 ・エチレンを共重合した「エバール(EVAL)」 フイルム(潟Nラレの商品名)
 ・EVOH樹脂をポリオレフィンやナイロンと共押 出ししたもの(共押のフイルムメーカーは多い)
などがある。

「ボブロン」フイルム(二軸延伸ビニロン、O−PVA)の性能と用途

図1.ビニロン樹脂の分子構造

 

 「ボブロン」は日本合成化学工業鰍ェ、1981年、世界で初めてビニロンを逐次二軸延伸し、商品として上市したフイルムの商品名である。
 「ボブロン」フイルムの特徴と用途を列挙する。
・透明単一プラスチックフイルムの中では最もガスバリヤー性に優れている。特に二酸化炭素のバリヤー性に優れており(表1)、減圧防止や静菌作用が必要なチーズ、スライスハム・ソーセージ、カステラなどの二酸化炭素ガス充填包装に適している。また、OPP/ボブロン/PEなどの構成で、けずり節ミニパックなど1
cc/u・24hrs.atm.20℃ クラスのハイバリヤー性が必要な用途にも使用されている。
・香気保存性がよいので、防湿性素材と組み合わせて日本茶、フィルター付レギュラーコーヒーパックなど、香りが生命の商品に適している。
・耐薬品性、耐油性がよい。溶剤や石油系物質の透過、吸着が少ないので鉱物油、油性食品の包装に用いられる。
・表面光沢および透明性がよい。特にO−PVA/CPPの二層構成では抜群の透明性になる。
・静電気が発生しにくい。ほこりが吸着しないので袋表面に傷が付きにくく、長期間陳列しても商品価値が低下しにくい。
・燃焼カロリーが低く、塩素を含んでいないので、
環境に対する負荷が小さい。

表1.ボブロンのガス透過性

厚み

 

μ

ガス透過度

cc/u・24hrs.atm.20℃Dry

CO

ボブロン

14

0.3

0.04

0.95

ON

15

32

15

240

PET

12

50

13

160

OPP

20

1400

600

10500

   しかし、PVAの最大の欠点は耐水性、防湿性に劣ることである。湿度80%RH以上ではガスバリヤー性の低下に注意が必要である。水物やボイル用途には適さない。

 

「エバール」フイルム(エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、EVOH)の種類と用途

図2.EVOH樹脂の分子構造

   EVOH樹脂は、ビニルアルコールとエチレンを共重合し、ビニロン樹脂の耐水性、耐湿性、接着性、加工性などを改良したものである。
  性質はPVAとほとんど重なるが、90%RH以上の湿度ではPVAフイルムよりガス遮断性がよく、包装用バリヤー材としてはPVAフイルムより一般的である。
   潟Nラレの商品名「エバール(EVAL)」は、EVOHフイルムを世界で最初に企業化(1972年)したもので、削り節ミニパックにOPP/EVOH/PEという構成で使用され、ハイバリヤー材として一気に主役になった。エチレンの重合比率や延伸の有無などで、いくつかの用途・銘柄に分かれている
(表2)


表2.クラレ・エバールフイルムの銘柄

銘柄

エチレン含有率

(モル%)

厚み

(μ)

備考

EF−XL

32

12,15

二軸延伸タイプ

EF−F

32

12,15,20

無延伸タイプ

EF−E

44

20,25,30

無延伸タイプ

EF−HS

47

15,20,25,30

ヒートシールタイプ

EF−CR

15

レトルトタイプ

HF−M

44

12

接着剤コートタイプ

VM−XL

32

12,15

アルミ蒸着タイプ

EF−XL
  EF−Fを二軸延伸したもので、ガスバリヤー性がさらに向上し、引裂性(開封性)も改善される。
   けずり節などハイガスバリヤー性を要求する包装に利用している。

図3.エバールフイルムの酸素ガス透過度

 

EF−F
   EVOHの無延伸フイルムで、OPP/EF−F/PE、PETまたはON/EF−F/PEなどの構成で、けずり節、みそ、漬物、半生菓子などのガス充填包装に使用されている。

EF−E
   EVOHの無延伸フイルムで、よく伸びるため、CPP/EF−E/CNのように未延伸フイルムとサンドイッチ構成にして、チーズ、ハム、ソーセージ、水産練り製品などの深絞り真空またはガス充填包装に使用されている。

EF−HS
   このタイプはエチレン含有率が高いのでヒートシールが可能になっている。CPPよりはシール温度はやや高いが、フレーバー、薬効成分の吸着が少ないので成分減少、ラミネート剥離などの事故防止が可能となる。ON/EF−HS、PET/EF−HSなどの構成で、パップ剤、芳香剤、入浴剤、医薬品などの包装に使用できる。

EF−CR
   EF−CRはレトルト可能タイプで、PET/EF−CR/CPP、ON/EF−CR/CPP、PET/EF−CR/ON/CPPなどの構成で、120℃までのボイル殺菌、レトルト殺菌が可能である。スープ、ハンバーグ、魚肉ソーセージなどの包装に利用されている。

HF−M
   このタイプは食品包装用ではない。熱接着剤コートタイプで、壁紙の表面に使用されている。防汚染性、マット加工性、エンボス加工適性に優れている。

VM−XL
   EF−XLにアルミ蒸着したもので、ガス遮断性が抜群である。ヘリウムガスもよく遮断するので、寿命の長い風船に適している。ポーションコーヒーバッグなど、賞味期間が長く、保香性を必要とするものにもよく使用されている。

EVOH系共押出しフイルム

   共押出しフイルムというのは異種の樹脂を平行した2つ以上のスリットから共に押出し、製膜すると同時にラミネートまでされているというものである。単体ではフイルム状にできないような数μという薄いものでも最大5〜7層まで積層可能なので、いろいろな性能・用途のフイルムがつくられている。下にナイロン−EVOH系フイルムの構成を示した。ナイロンとEVOHは接着性樹脂(アドマー)がなくても積層は可能であるが、EVOHとPEやPPとは接着性樹脂層が必要である。EVOHでガスバリヤー性をもたせ、ナイロン層で強度や耐ピンホール性を付与している。

    ナイロン/(接着性樹脂 )/EVOH/接着性樹脂/LLDPE

   表3に主なEVOH系共押出しフイルムの例と用途を示した。
   EVOHの優れたガスバリヤー性と深絞り適性を活かして、畜肉製品、水産練り製品の真空深絞り包装、炭酸ガス充填包装などの用途が多い。

 

表3.EVOH系共押出しフイルムの構成例

構      成

特   徴

主 な 用 途

PE/EVOH/PE

深絞、シール

ラミ、味噌、生麺

PP/EVOH/PP

耐熱、腰

ラミ、畜肉

Ny/EVOH/LLDPE

チューブ

畜肉、水産練り製品

PVC/Ny/EVOH/Ny/LLDPE

剛性、成型性

ハム等のボトム材

PE/Ny/EVOH/LLDPE

耐水、カール防止

チルドビーフ

EVOH/Ny/PE

ラミ用

PETとラミで畜肉用

ON/EVOH/ON

延伸フイルム

ベースフイルム用

ビニロン系フイルムの今後

   ビニロン樹脂は、他の樹脂にはない多くの特徴を持っているので、水溶性樹脂、感光性樹脂、ゴム資材、接着剤、アスベスト代替、セメント補強剤など、多くの機能性材料として一般用途、工業用途に需要が伸びている。包装用としても、延伸フイルムでは透明蒸着フイルムにとってかわられることも多いかもしれないが、深絞り用途ではEVOH樹脂に勝るものはなく、バリヤー性共押出用樹脂として今後も伸び続けると予想されている。また、OPPにPVAコートしたフイルムもKOP代替として需要を伸ばしている。さらに、ビニロンに透明蒸着をし、ガス透過度、透湿度ともに0.1cc/u・24hrs.atm.、0.1g/u・dayという超ハイバリヤーフイルムが実際に包装用として使用されている。安定した高度なガス充填包装を設計するなら、まずはビニロン系フイルムを検討すべきであり、今後もガス遮断包装には欠かせない存在である。

※ガス透過度の単位について
   ガス透過度の単位は国際単位(SI単位)で表記することになっているが、本記事では従来の工学単位を使用している。次の式で換算できる。

   1cc/u・24hrs.atm.=9.87ml/u・day/MPa 

                   または

   1cc/u・24hrs.atm.=5fmol/u・s・Pa

 参考文献:「ボブロン」および 「エバール」のカタログ・技術資料


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